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bernadette

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逃避行未満

親を殺したその日、家にプリントを届けに来たクラスメイトに、私はすべてを打ち明けた。
 髪をそれとなく茶色に染めて、化粧品で上手に色を付けたクラスメイトは、私の唐突な言葉に、大きな目をぱちりと瞬きさせた。黒く長い睫毛とグラデーションの瞼が印象的な瞬きだった。

「殺した? 親を?」
「……うん」
「じゃあ、家の中に、その、親の死体があるってこと?」

 親の死体を、のところを小声にして聞いてきたので、私は神妙な顔で頷いた。
 なんだかもう、どうでも良かったのだ。本当に、もう、どうにでもなってくれれば良いという気分だった。親を殺したのは深夜の2時頃で、クラスメイトがやってきたのは午後の4時だから、ゆうに14時間は経っている。それだけの時間が経ってしまったから、人を殺した瞬間の興奮や、その直後の後悔も何もかも、私は噛み砕いて呑みこんでしまっていた。後に残るのは無気力だ。私の部屋のベッドで無残に死んでいる親から目を逸らそうが眺めようが、死体は死体のまま、何も変わらない。そうと気付いてしまえば、自分の衝動任せの行為を隠すのは無意味だという諦めはすぐに生まれてきた。
 そういうわけで、クラスメイトに警察を呼ばれても良かったし、恐怖に悲鳴を上げられても良かった。そういう諦めだった。
 ところがクラスメイトは、頷いた私をじっと見て、そのまま黙り込んでしまった。予想外の反応に、声を掛けようか、どうしようか、と少し悩む。とはいえ、かける言葉は特になかった。仕方なく一緒になって黙り込んでいると、クラスメイトはそれまでの沈黙がなかったかのように、いつも通り、プリントを届けに来たと言う時の声色で提案してきた。

「じゃあさ、京都に行こうよ。旅行」

 今度は私が黙り込む番だったが、結局それも長く続かず、私はなんとなく、神妙な顔で頷いた。


※少女と少女の逃避行にもならない京都旅行。
※少女A…親を殺した。外見が地味。少女B…化粧も髪染めも悪いこともする。


1)京都旅行準備編
・貯金額の確認と、いったん家に帰って荷物詰めてくる
・服、地味なのしかないなら貸してあげる
・せっかくだから化粧をする
・初めて新幹線の切符を買う
・二人並んで京都行の新幹線に乗る

2)京都到着編
・着いたら深夜だけど泊まるところがない
・Bが途中からずっと携帯をいじっていた
・ついてきて、というからついていったら、ラブホテルだった
・泊まるだけならいけるいける、とのこと
・その晩は一つのベッドに二人並んで寝ることにした
・どうしても眠れなくて、一人、床に転がって寝る

3)旅行の朝編
・なんで床で寝てるの、という笑いから始まる
・ホテルを出て、適当な喫茶店に入って行き先を決める
・ところでなんで京都旅行なのか

4)旅行の昼編
・嵐山

5)旅行の夜編
・今度はきちんとホテル(ビジネスホテル)をとる
・ツインルームなのでベッドは別々
・ホテルは2泊とった
・Bが携帯の電源を切る
・Aは携帯を持っていないので、これ以降は観光マップ頼り

6)二日目の朝編
・行き先はあっさり決まったので、二人並んで宿を出る
・伏見稲荷に朝から行く
・鳥居をくぐっていく時の不安
・山登り
・実を言えば、私、

7)二日目の昼編
・清水寺
・舞台の上から景色を眺める
・観光客の声を聴きながら、二人で並んで、こそこそと内緒話

8)二日目の夜編
・その日は一つのベッドに入って、抱き合って眠った

9)三日目の朝編
・荷物はすべてコインロッカーに預けてきた
・どこに行こう
・どこでも良いよ


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