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bernadette

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おっさんしょうじょ2

薄い生地で出来た、淡いピンクのキャミソールワンピース。空色の盤面の、洒落た腕時計。ほっそりとした首筋を飾るシルバーに、一粒光るネックレス。白い足首。その細い肩に、ジャケットを羽織らせる。

「やっぱりむりです」

 玄関先で震える少女は俯いていた。少し癖のある、色の薄い髪に隠れて表情は見えないが、男にはそれが容易に想像できた。
 少女の手がジャケットの襟元を強く握りしめる。玄関には未だ土を踏んだことのない、白いパンプスが転がっていた。少女の足にぴったりはまるそれは今日も、外の世界を歩むことはないのだろう。無理矢理にでも少女の腕を掴んで立ち上がらせるほどの度胸はなく、男はただ黙って彼女の横に立ち尽くした。固く閉じた扉の向こう側に思いを馳せる。熱い日差しや目が眩むほどの青空、立ち上る陽炎の向こう側の街並み。彼女が憧れるチェーン店のコーヒーショップや、ハイティーンに人気のアクセサリーショップ、恋人達が集まる海辺の公園、それらすべては少女にとって美しい世界であると同時に残酷な現実だ。

「こわいです、せんせい」

 ジャケットの上からでも分かる華奢なその肩にそっと手を載せた。怯えられるかと一瞬迷ったが、彼女の体が距離を取ることはなかった。そのことに少しだけ安堵する。
 柔らかな衣擦れの音がした。

「わたし、やっぱり、こわいです、せんせい。ひとが、こわい」

 そうか、と吐息のように口から零れた相槌は、きっと少女には届いていない。


※奇談に繋げるか、WRに繋げるか……
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