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bernadette

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sigと雇い主と秋


 秋は嫌いだ。果実が実り、木々が赤く染まり、澄んだ空が広がる、秋が嫌いだ。盛りを終えた生物たちが静かに死に近づいていく、その季節の残酷さが、嫌いだ。
 sigがきわめて穏やかにそう告げると、心地良さそうなソファーに体を預けた雇い主は柔らかな表情を浮かべた。

「君も知っているだろうが、英語では春はspring、秋はfallと言うだろう。春は跳ねて、秋は落ちる。夏に向けて勢いをつけた命は皆、冬に向けて死んでいくんだ。秋は、果て行く命の行進の、ほんの途中だ」

 落ちていく季節の、寂寞と憂鬱を含んだ空気は肺いっぱいに満ちてsigの体を動かすだろう。枯れる木々や草花の死の香りを胸にsigは生きていく。もしくは、冬に向けて死んでいく命の中にはsigの命も含まれているのかもしれない。やはり秋は嫌いだった。何もかもが暗く沈んでいく季節の夕暮れが、彼の頭の中から離れない。赤い夕暮れの向こう側に消えていったものを思い出しては、泣き出したい衝動に駆られるのだ。
 雇い主はただただ人当たりの良い顔をしている。
「さあ、仕事だ」

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