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bernadette

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吸血鬼殺しと魔術師殺し2



 雪の朝は嫌いだ。
 ベンチに座りながら列車を待つ。ユーリィの隣に同じように座った相棒はまだ眠いのか、コーヒーを片手に目をこすっていた。茶色の髪は寝癖で方々に跳ね、慌ただしく着替えてきたおかげでジャケットのボタンは一個ずつずれている。安っぽい赤いマフラーはぐるぐると巻かれ、彼の顔の半分はマフラーで埋まっているようなものだった。
 息が白い。

「まだ来ないのか、列車」

 ふたりが乗るべき列車は到着時間をとうに過ぎているというのに来る気配がない。おそらく雪のせいで遅れているのだろう、とユーリィは口に出そうとして、やめた。昨日の夜から降り続いた雪は、今朝になってようやく止んだらしい。雪の降りやんだ朝は昇り始めた太陽が雪原を照らし、どこもかしこも眩しかった。列車が進むべきレールはその雪原の下だ。雪に慣れた列車といえど、さすがに通常運転とはいかなかったらしい。
 雪の朝は嫌いだ。ユーリィにとって晴れた雪の朝は、すべてが狂いだした日そのものだ。吐く息の白さは、体から流れ出た血液が上げる湯気によく似ている。眩しい朝日は青ざめた肌を照らす照明で、真っ白な雪で覆われた地面はキャンバスのような悪夢だ。細く、長く、息を吐く。これ以上思い出さないように強く目を瞑った。

「コーヒー飲むか?」

 隣のユーリィの様子を知ってか知らずか、眠そうな相棒の声がする。きっとぬるくなってしまっただろうコーヒーの香りがした。

「……アルベルト」
「なんだ」
「私は紅茶が好きだ」
「わがまま言うんじゃねえよ”坊ちゃん”」

 あくび混じりに男は言う。人を小馬鹿にしたような呼び名を訂正する代わりに、ユーリィは彼のもう片方の手に握られていた朝食のサンドウィッチを奪った。
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