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bernadette

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あの子たちの設定

日向…肩より長い髪を少し高い位置で一つにまとめている。釣り目だが険はなく、凛々しいという印象を受ける。すらりとした長身で、細い手足はしなやかだ。白い頬に大人びた表情が、年上らしさを醸し出している。
陸奥…胸元まである黒髪をハーフアップにしている。暑いときは二つ結びにしたりポニーテールにしたりしているが、お気に入りのヘアアクセサリーは、兄である大和にもらった蜂蜜色のキューブがついたヘアゴムだという。大和に似ているが、彼よりも目元に甘さがある。
紀伊…跳ねっけのあるショートカットに、お気に入りらしいヘアピンを耳の上に差している。色素の薄い髪に、健康的な色をした肌は活発そうな少女を作り上げている。事実、足も速ければ身のこなしも軽やかだ。少し間が抜けているのはご愛敬といったところか。
信濃…色鮮やかなシュシュでダークブラウンの髪の毛をまとめ、胸元へ流している。マニキュアやリップが詰まった化粧ポーチは必需品で、どこに行くにも持っている。十分白いが、日向のような肌になりたいと常々思っている。


秋津189>大和180>和泉178>=出羽177>日向173>駿河170>>紀伊163>信濃160>=陸奥159
・駿河は成長期のため、まだ伸びる
・女性陣は伸びても170の壁を越えないくらい


・大和…責任感が強い。何をやらせてもそつなくこなす秀才。みんなのまとめ役。少し長めのショートカットは、女子も羨む癖のない黒髪をしている。日向と合わせて秋津の助手もする。
・和泉…頭はあまり良くないが、運動神経は抜群。直感が優れており、クジ運も不思議と良い。筋肉がほどよくついた体格に茶色の髪、鋭い目つきと相まって、第一印象ではだいたい怖がられるが、意外と面倒見は良い。
・出羽…サボり癖があるが、化学準備室にはよく顔を出している。サボるわりに要領が良いため成績は常に上位。脱色した上で灰色に染めているため、傷んだ髪はあまり触り心地が良くない。面倒事はとりあえず出羽に押しつけることにしている。
・駿河…おしゃべりではない性格に、少しけだるげな雰囲気が漂っている。日向と顔立ちは似ていないが、垂れ気味の目元から漂う艶はどこか似ている。何歳になってもシスコン。料理含めて家事全般は人並みに出来るおかげで、先輩方からいろいろと押しつけられる。面倒くさがりながらもきっちりこなす。

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駿河と大和と彼らの闇

 握りしめた固い感触が叫んでいる。早く、早く、早く、早く。走るより速く。風よりも速く。朝が来る前に。朝焼けが闇を食い尽くす前に。季節が変わる前に。
 なぜそうも急いているのか。持つ者の精神を浸食する声なき声は、咽び泣いているようにも、怒りを喚き散らすようにも聞こえた。心が穏やかにならない。生温く吹く風に身を委ねても、静寂は駿河の心に訪れない。
 ただ、それは叫んでいる。
 そっと目を開ければ、一色の闇がこちらを覗いている。

「怖いか」

 静かな声が背にかかる。数歩後ろに下がった大和の声は、目の前の暗闇に吸い込まれていくようだ。わずかな呼吸の音さえも奪われていく。暗闇は、恐ろしい。

「怖い、です」

 正直に答えた。もとより駿河は嘘をつくのは苦手だ。それは、物事を隠せないということでも、良心が咎めるということでもなく、ただただ嘘をついたその後の、事実関係の隠蔽が面倒だからだ。大和が笑う気配がした。嘲笑ではない。素直に答えた駿河の正直さを知っているが故の、安堵の微笑みだった。
 駿河は、この闇が怖かった。

「おれたちも、こういう闇から生まれたから。だから、なおさら怖い」

 駿河も、駿河が愛してやまない彼の『姉』も、尊敬する大和も、幼なじみの陸奥も。皆、自も他も区別がつかない真っ暗闇にどろどろと溶けながら、何かの拍子に形を得、暖かな手に掬い上げられ、そうしてようやく己を己だと認識できたのだ。駿河は、自分がどんな存在であるのかを知らない。人間ですらないからだ。人間は、母と父の間に生まれて来るものだという。だが、駿河は母親という子を腹に宿すものも、父親という子を守り慈しむものも、悲しいことに何も知らなかった。
 ただ、彼はそれを不幸だとは思えなかった。生まれたときから彼を愛し守ってくれる『姉』がいた。共に成長していく少女とその兄もいた。そして、彼に名と確固たる形を与えてくれた師がいた。それを幸福と呼ばず、何と呼べばいいのか。
 だから彼は暗闇が怖い。彼が彼になる以前の、泥のような黒色に飲み込まれるのが怖い。飲み込まれ溶けたとき、掬い出してくれる手を掴む手を無くしてしまうことがこの上なく恐ろしいのだ。
 握りしめた固い感触が叫ぶ。早く。早く。早く。早く。朝を迎える前に。朝焼けが闇を焼いてしまう前に。焼かれた闇がさらに色を濃くし、夜に蘇ってしまう前に。駿河達のようになりきれなかった哀れなものが、その黒い手を伸ばすより早く、切り落としてしまわねば。
 ああそうだ、そうしておれは葬るんだ。あの闇は駿河達の不幸だ。闇から産まれた子供達の悲しい過去だ。人間ではない彼らを正しく定義づけるのは、彼らの師がひとりひとりに与えてくれた「名」、それだけだ。正しく殺して葬らなければならない。「名」を与えられるほどの形を持たない、悲哀と怒号と苦痛の塊を。それらから抜け出すことの出来た、駿河達の手で。
 真っ暗闇の中でも銀色の光が見えた。固い鞘から抜き放たれた刃の輝きが目を強く灼く。この日のためだけに用意された刃は初めて触れたはずなのに、何年も会っていなかった旧友に出会えたような懐かしさを胸に過ぎらせた。さあ、仕事だ。大和が静かに隣に並んだのが見えた。

紀伊と信濃と日向とシュークリーム

 黙々と針に糸を通し、縫っていく。

「ねえねえ、これほんとに治るのかなあ」

 少し間の抜けた声は紀伊だ。

「さあ」
「さあって」

 秋津先生が言ったことだからそうなるんじゃない、としか、言いようがない。一周まつり縫いが出来た信濃は慎重に玉結びをして、糸を切る。紀伊も同じだ。テーブルを挟んで向かい側に腰掛け、横たわった出羽の体と、左腕を縫い繋ぐ。
 ここしばらく姿を見せなかった出羽を一番最初に見つけたのは、彼とよくつるんでいる馬鹿、こと、和泉だった。見つけたと言っても、その時には既に、出羽の体はバラバラだったという。冷房が効き過ぎたスーパーで、和泉が398円(税抜)で買ってきたのは出羽の頭だけだった。そのあとすぐ、皆の先輩である大和と日向が業務用スーパーで胴体を買ってきた。税抜998円だった。両腕は自販機から出てきた。買ったのは紀伊と信濃だ。それぞれソーダとカフェオレの缶を買おうとしての時だった。合わせて260円である。一番最後に、秋津が両足を持ってきた。ホームセンターのペットコーナーに置かれていたらしい。値段は残念ながら聞けなかった。
 一通り揃った出羽の体を縫って繋げるように言ったのは秋津だ。幸運なことに、この暑さの中でもさほど出羽の体は腐敗が進んでいなかった。スーパーでも業務スーパーでも自販機でも、十分冷やされていたからだろう。唯一両足が心配ではあったが、ペットコーナーもそれなりに涼しかったのでおそらく大丈夫だ、とは秋津の言だ。彼の言葉に従って、手の空いている紀伊と信濃が縫い繋げることにした。ご褒美のアイスに釣られたとも言う。なお、第一発見者の和泉は宿題を忘れたということで、秋津の監視のもと泣きながら宿題をしている。やはり、馬鹿である。

「二人とも、お疲れさま」

 少し低い、艶やかな声は日向だった。セーラー服から伸びた腕の白さが眩しく、信濃はそっと手を止めて目を細めた。うらやましくなるほどの肌の白さは、夏であっても変わらないらしい。

「日向せんぱーい。だいたいくっついた!」
「それは良かった。あとは頭か」
「頭は秋津先生が」
「一番大切なパーツだからね」

 首のない少年の体は、それだけではまだ、誰の体なのか分からない。個を特定するための頭が必要だ。自然と三人の視線が、部屋の隅に置かれた大型の冷蔵庫へ向かう。野菜室に詰め込まれた頭は、おそらく、冷え冷えとしているだろう。
 ともかく、両腕を繋ぎ終えたということは、紀伊と信濃の仕事が終わったということだ。

「よく出来てる。あとは大丈夫だろうし、お茶にしようか」
「わあ、日向先輩、その箱って」
「駿河達には内緒だよ」

 笑って、人差し指を唇に当て、日向が取り出したのは学校近くの喫茶店のロゴが入った箱だった。思わず紀伊と顔を合わせ、にんまりと唇を吊り上げる。日向は乙女心をよく理解している。喫茶店「地球儀」のシュークリームは絶品で、この学校の女子生徒なら誰でも好きな、大人気商品なのだ。さらに言えば、この化学準備室に集う生徒達の大好物でもある。
 裁縫道具を手早く片づけ、信濃はうきうきとお茶の準備を始めた。簡易IHコンロに薬缶を載せ、愛用しているお茶用ビーカーを三個。紀伊は甘い物が好きだから、粉末のココアを、信濃はアップルティーのティーバッグを、日向にはインスタントコーヒーを。焦らずとも、秋津は和泉の宿題の見張りでしばらく戻ってこないだろうし、駿河や大和は秋津に出された課題のために外を走り回っているはずだ。出羽はもちろん、頭がついていないのだから、三人が美味しい美味しいシュークリームを食べたところで知る由もないだろう。
 飲み物が揃ったところで、三人はそれぞれ顔を合わせ、いたずらっ子の笑みを浮かべた。そして小さい声を合わせて言うのだ。

「いただきます」

 かぶりついたシュークリームからは、甘い、クリームの香りがした。

陸奥と駿河と大和と日向と化学準備室

エアコンが完備された化学準備室は天国だ。少し薬品の匂いがする部屋だが、外の暑さと比べればなんてことはない。冷蔵庫も、ポットも、陸奥が愛して止まないチョコレートバーも揃っている。ここを天国と言わず何と言うべきか。冷蔵庫の扉を遠慮無く開け、冷やされたチョコレートバーを一本取り出し、包装紙を躊躇いなく剥ぐ。甘いチョコレートの香りが嗅覚を刺激する。
 口に入れたチョコレートバーの表面はひんやりとしていた。口の中の熱に徐々に溶けていくのが分かる。陸奥は冷房の温度を一度上げた。まだ、先生はおろか、他の生徒達すら来ない化学準備室は静かだった。

「あ、むっちゃんずるい」

 一番最初に来たのは、同じ一年生の駿河だった。

「ずるくない。私が自分で買ってきたんだもん」
「おれにも一本ちょうだい」
「やだ」
「ケチ」
「ケチで結構」

 気怠げな目をした黒髪の少年は、陸奥にそれ以上何か言うのを止めたようだった。代わりに、陸奥の向かい側の席に腰掛けたかと思うと、自分の鞄の中をゴソゴソとあさり出す。 少しして出てきたのは小さなタッパーだ。透明なプラスチック越しに、きつね色に焼けたクッキーが入っているのが陸奥からでも見えた。

「駿河、ずるい。日向先輩のクッキーでしょ」
「姉ちゃん特製。ずるくない。おれの姉ちゃんだし」

良いだろー、と自慢するかのように駿河がタッパーの蓋を開け、ぽりぽりとクッキーを囓り始める。丸い、何も変哲のないクッキーだ。だが絶妙な焼き加減と甘さ控えめな風味、さくさくとした食感がたまらなく絶品であることを陸奥はよく知っている。

「一枚ちょうだい」
「やだ」
「ケチ」
「ケチで結構」
「……何やってるんだお前ら」

 呆れたような声が頭上から降ってきたかと思えば、いつの間にか大和が来ていた。その扉が閉まる音に、少し遅れて話題の日向が姿を現す。二人とも、両手に段ボール箱を抱えていた。いつも通り、秋津の雑用をこなしていたのだろう。

「聞いてよ兄さん。駿河が私の目の前で、これ見よがしに日向先輩のクッキー食べるの」
「むっちゃんもチョコレートバー食ってんじゃん」
「お前ら相変わらず食い意地張ってるなあ」

 段ボール箱を秋津の机に置いた日向が言う。

「クッキーくらいいつでも作れるよ。陸奥も食べる?」
「食べる」
「即答かよ」
「じゃあ明日持って来るよ」

 少し暑いな、と大和がエアコンの温度を一度下げた。お茶淹れるよ、と日向がポットに水を入れ、四人分のビーカーを洗い始める。姉ちゃんおれ手伝う、とタッパーに蓋をした駿河がするりと立ち上がった。陸奥は一人、六人掛けのテーブルの上で頬杖をつき、ぼんやりと眺める。秋津はまだ来ない。二年生の和泉や出羽もまだ来ないようだ。そういえば、出羽はここ二週間ほど顔すら見ていない気がした。サボり癖のある彼だが、放課後の化学準備室にだけはこまめに顔を出していたはずだが、珍しいこともあるものだ、と一人思う。彼とよくつるむ和泉も、今週会った記憶がない。はてどうしたことかと聞こうにも、大和は秋津の机に置いた段ボール箱の中身を探っているし、日向と駿河のきょうだいは、仲睦まじげに茶を淹れる準備をしている。
 秋津先生早く来ないかなあ。化学準備室のいつものメンツには秋津も含まれている。暑い夏でも涼しいここは天国だが、さらに天国たるには皆が敬愛して止まない秋津が居なくては始まらない。
 陸奥が小さく呟いたのを見計らったかのように、廊下に通じるドアが開いた音がした。

先生と生徒達

どこかの学校の、どこかの部活の、どこかおかしい生徒達とそれを率いる先生。
こちら側とあちら側が混ざり合っている人達。


秋津…先生。男。「私」。白衣を着ている理科教師。放任主義。

和泉…二年生。男。「おれ」。生首発見した人。宿題はやってこない派。
出羽…二年生。男。「オレ」。生首の人。めんどくさがり。

大和…三年生。男。「俺」。みんなの頼れる先輩。先生の助手。
日向…三年生。私。セーラー服。料理上手い。気配り上手。
陸奥…一年生。女。「私」。大和の妹。クールビューティー。
駿河…一年生。男。「おれ」。日向の弟。シスコン。料理上手い。気怠い。